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(更新: ORICON NEWS

長渕剛5年3カ月ぶりのアルバム「BLACK TRAIN」から見る“熱さ”の源とは

敗北は本質的な負けではない、負けて見つかることがある

M3 「Loser」
先行配信シングル。EDMが席巻する今の音楽シーンを捉えたダンス調のトラックに、現在を闘うミュージック・マンの姿を描く。

――男は、わかっているけれど、それをあえて受け入れる“負ける役割”があったりする。誰かを守るために負けを背負うこともあると思います。それでも生きていかないといけない。そんな男の哀愁や不屈の精神を感じました。

「まず…勝てるわけないのよ、人間なんて。勝とうと思うこと自体がおかしい」

――と言いますと…?

「…ウチの親父はね、鹿児島の小さな種子島で生まれて、無学で、身体を張って警察官になった。最初は機動隊に入隊するんだよね。イケイケの前線で勝ちあがるためには身体張るしかない。それで柔道もやって身体を鍛えて、40手前で組織犯罪対策第四課(マル暴)に配属された。やっとモノクロテレビが入ったくらいの時代ですよ。そんな中、親父は何度も昇進試験に失敗して、家に帰ってくると、母から『また昇進試験失敗して。あんたが勉強しないから貧しいんだ』って言われていさかいが絶えないわけ。血も涙も出るわけよ(笑)。少年時代の俺は打ち震えてさ「父ちゃん母ちゃんケンカしないでよ」「いつもは父ちゃんかっこいいのになんで…」って。

ある時、親父が125ccのバイクで『剛、温泉に行こう』って言ったんですよ。2人乗りでね。小学校1、2年生かな。父ちゃんのでっかい背中にもたれて、『父ちゃんだ!!』って思いながら1時間半の道のりを2人乗りで走って。一緒に卓球して、コーヒー牛乳飲んでさ。帰り道は、疲れるから柔道の黒帯を巻いて僕を背中に背負ってくれてね。家路に向かう途中、宮ヶ浜ってところにバイクを止めたんですね。タバコをくゆらせる。何にも言わないんですよ。僕はその時にそばに寄っちゃいけないなと思った。一緒に銭湯に行くと、親父の3倍くらい身体がでかい怖そうな男の背中を親父はバーンってぶってね。『お前元気か!』って親父が呼びかけると『ああ、ぶっちゃん!!』って。そんなカッコいい親父が、寂しそうにタバコをくゆらせていたわけです。

…これが敗北感なんじゃないかな、って歳を重ねると思えてくる。『親父、勝てないんだな』って」

「でも、負けても負けても譲れないものが親父にもあったはずだ。親父はキャリアの上司に足をひっかけたりするんだってさ。『お前みたいな学問でやってきた人間が、何故現場の人の気持ちがわかるのか。罪を犯した人間たちの弱い心がわかるのか。被害者の気持ちがわかるのか』。そういう思いがたくさんあったんだと思う。『俺は無学だ、でもお前には負けてねえぞ、俺は現場で愛されている、少年を指導している、キャリアの連中が入れない場所でコミュニティを作っている』。その想いこそが敗北感を捨て去り、男として身を立てたのでないか。人間は、勝ち上がろうと思っても、なかなか勝ち上がれない。勝ちあがる人ははどれだけ負けの敗北感をもっているのか?

もっとデカい話をすると、日本はアメリカに戦争で負けてから、連隊を組んで高度成長を駆け抜けた。明らかに敗北というものを見つめて、親父が黙って敗北感を背負って“いつか俺も…”って煙草をくゆらせたように、昭和の時代は日本のみんなが志を高くして、連隊を組んで生きた。親父の年齢に近づくほど理屈じゃないって体感してくる。それがその人たちの心の中で、負けを見つめて、負けた人間は一人じゃない。「お前も負けたのか、お前もか、お前もだろう。負けた人間みんなで拳をあげろ!負けたーーー!」って。勝者を祝う気持ちよりも、負けた人間の勝ち上がっていこうとする思いは強い。そのことを今の時代に生きている人たちに感じてほしかったのかな」

――負けて“なにくそ”って思わないとそこですべてが終わってしまいますよね。痛みや弱さの裏には、向上心が潜んでいる。負けることが勝つための大きなエネルギーになる!
長渕剛WEB動画インタビュー
ニューアルバム『BLACK TRAIN』より熱きメッセージを届ける!!

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