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ORICON NEWS
my job , my heart 「考えるラーメン屋」
ラーメン職人は、経営的視点が必要
「手本とした人はいませんが、独立前、約8年間は総料理長として経営者目線で仕事ができました。社長の意見と現場の意見両方を肌で感じて、ラーメン職人でありつつ、マネジメントも学べました。どっちの不満も分かる立場で大変でした(笑)。従業員の給料が払えなかったら、お店は回らないですから、従業員のことも考えていかないといけない。独立志望者も増えてきていますし、『田なかで修業した』っていわれて恥ずかしくない教育をしていかないといけないと思っています」
いいラーメン店は、「おいしい」だけではダメ
「お父さんの料理」がおいしいのは当たり前。食材に凝ってお金をかけて、時間もたっぷり使えるからだ。それよりも評価すべきは毎日家計を考えながら工夫を凝らしているお母さんの料理だ。田中氏は「料理人の仕事は、手持ちのカードを最大化する組み合わせを考えること」だという。
「料理番組は録画して見ています。『料理の鉄人』とかプロのものも好きですが、主婦向けの時短料理も勉強しています。いろんなインスピレーションをもらえる。スタッフにもラーメンじゃない店に食べに行きなさいと言ってます。新しい発想のために、いろいろなものを食べることも必要だと思うんです」
今年一番嬉しかったこと・悔しかったこと ラーメン通からの高評価
新たな取り組みの失敗は「発見」
それ以来、食材の仕入れ状況は細心の注意を払っている。
仕事人に5つの質問
A.「お互いに人を幸せにできる仕事」
「おいしいラーメンをお出ししてお客さんに幸せになってもらう。もちろん従業員に対しても、自分に対しても。「おいしいものを作って人も自分も幸せになれる仕事です」
Q.ラーメン店の仕事のいい面・悪い面は?
GOOD!
「おいしい料理を作れること」
「誰かのためにおいしい料理が作れる技術が身につくことです。家族においしい料理を食べてもらえるのは幸せなことですね」
BAD
「過酷な労働の割に、まだまだラーメン自体の評価が低い」
「ラーメン屋は仕込みを含めて一日の労働時間がすごく長い。本当に体力と根気がいる仕事です。寸胴も食材もとにかく重いし、そして、明日出すものを今日作らないといけない。毎日22時50分が締め切りです。その割に、フレンチ・イタリアン・日本料理に比べて、評価が低い。いまでこそ少しずつ“麺料理”として確立されているが、まだまだ良くも悪くも“大衆食”です。これを少しずつ変えていきたい。ラーメン店の価値を上げていきたい」
Q.ラーメン屋さんにはどんな能力が必要?
A.「いろいろな料理を食べること。そして食べたものを再現すること。あとはいきなり泥臭くなりますが体力と根性(笑)」
“根性”というと精神論に聞こえるが、「投げ出さないために、細かな目標を設定して、一つずつクリアすること」とスタッフに指導しているそう。
Q.ラーメン屋じゃなければどんな仕事についていたか?
A.「美容師」
「料理人でなかったとしたら、高校生の時になりたかった美容師になっていたかもしれませんね」
Q.仕事の相棒アイテムは?
A.「ミニメモ帳」
“ここでしか食べられない味”を楽しみながら創造したい
料理人としての考えでもあるんですが、僕はいいところを見つけるのが得意で、そうあり続けたい。灰汁が出る食材でも、使い方次第です。人間は嫌いなことから逃げることが多い。仕事も絶対にいやな部分、つらい部分があるけれど、そのつらいことの中のどこかに必ず良いことが潜んでいる、そう思って働いています。人生に近道があるとすれば、仕事を楽しむことじゃないでしょうか」
(取材・文 / 加藤由盛)