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(更新: ORICON NEWS

[Leader’s Voice] SHOWROOM代表取締役社長 前田裕二氏「残るために必要なのは、腕力でも知性でもなく、適応力」

企業社長やプロジェクトリーダーから仕事の哲学、ビジネスの視点を探る連載企画[Leader’s Voice]。仮想ライブ空間「SHOWROOM」が、活況を呈するライブストリーミング市場で存在感を強めている。同社社長の前田裕二氏はユーザーのエンゲージメントを高める様々な機能を次々と投入し、その一方で、広告モデル(B to B)ではなく、“投げ銭”を採用したB to Cモデルによる収益化にも成功。同サービスをけん引する前田裕二氏に今後の展望、さらにはタレント・アーティストビジネスの未来像を聞いた。
※本記事はオリコンが発行するメディア業界紙『コンフィデンス』2016年8月29日号の内容を加筆修正したもの。表紙にキーパーソンが掲載されるようになった14年9月1日号以降では前田氏は最年少で表紙を飾った。
Profile
まえだ ゆうじ
87年生まれ。2010年、早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入社。11年からニューヨークに移り、北米の機関投資家を対象とするエクイティセールス業務に従事。13年5月にDeNAに入社し、同年11月に仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げる。15年8月に当該事業をスピンオフ、SHOWROOM株式会社を設立。代表取締役に就任。なお、SHOWROOMは同月末にソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受け、合弁会社化している。

動画ストリーミングサービスの中でも、「能動メディアに特化」

――エンタテインメント系アプリでは、セールスランキングで常に上位に位置するなど、「SHOWROOM」は順調に規模を拡大していますが、その要因はどこにありますか?
「売上は公表していませんが、事業計画書通りの収益成長を実現できています。リアルタイムで配信を行っている仮想空間に、ユーザーがアバターとして訪れる。そのユーザーのエンゲージメントの高さが大きな成長要因になっています」

――ライブ動画ストリーミング市場は、このところ新規参入する他社も増えており、競争が激化していることについて、どのように捉えていますか?
「動画ストリーミングサービスが増えているのは嬉しいことですね。市場に参加する他社が増えれば、自分たちでお金や労力をかけなくても自然にパイが広がります。お互いに参照し合い、競うことで、市場が拡大する。あとは、その中で競争優位性を保ち続けていくことが重要になってきます。私は、動画ストリーミングサービス自体は、受動タイプと能動タイプとで大きく2 極化すると予想しており、それを、“高級レストランとスナック”と表現しています」

――具体的にはどのような点でしょうか。
「高級レストラン型は、シェフによって厳選された料理を顧客が消費するモデル。消費者は、コンテンツの一部になるというよりは、むしろ供給側の発想に身を委ねて、その中で一流のサービスを受ける。一方、「SHOWROOM」はスナックです。ママさんに「今日も来てくれたんだ」と言われたり、隣にはいつもの常連がいる。人との関係性やその場の体験価値にお金を払っているのであって、コンテンツそれ自体(スナックの場合は、お酒や乾きものなどのおつまみ)に高い価値があるわけではない。さらに、ママが酔いつぶれたら客が自分でお酒を出しちゃうような、視聴者と演者の関係が曖昧になってきているところも、「ユーザーがコンテンツの一部になり、エンゲージメントが高まる」という点で、スナック的だなと思う部分です」

――6月にはAKB48の選抜総選挙に連動し、272人の立候補者の配信を行っていました。AKB という強力なコンテンツであっても、スナック的な構造は変わらなかったのですか。
「ある立候補者のファンが、応援したい気持ちを抑えきれずに、自分で応援のためのルームを開いて配信する、という現象が起きていました。しかも、その人自身がなぜかちゃんとかなりの金額をギフティングされていた(笑)。いわば、ズボラなママのために自分も何かしてあげたいという気持ちにも似た、非常に強いエンゲージメントの拡散が生まれていました。そういう意味でも、「SHOWROOM」は受け身でなんとなく観るといったものではなく、「能動メディア」だな、と。ユーザーは代替可能なヒマつぶしの1 つではなく、目的意識を持ってサービスに遊びに来ることが多い。能動的にコンテンツに参加することで、より深い満足を得られるよう設計しています」

――タレント・アーティストビジネスでは、どのようにライブ動画配信を活用していくべきでしょうか。
「かつてのスターは、強いカリスマ性があり、ファンと一切交流しないような状態でも成立するような存在でした。そうした本来の偶像的なポジションの人は、ビジネスモデル上、今後ますます数が減っていくのではないかと思います。ごく一握りの芸能人ということですが、そもそも、そうなるための難易度が非常に高いのに、持続可能性は低い。でも、大手の芸能事務所に所属し、そこを目指すあまり、滞留しているタレントたちは多いのではないでしょうか。実はそういう人たちにこそ、「SHOWROOM」の仕組みをもっと活用してもらいたいと思っています。

「SHOWROOM」の演者は、歌や見た目も含めて、原石であればあるほど応援したい、育てたいというユーザーの感情を刺激できて、有利です。もちろん、すでにファンの基盤を持つ人が、より強固なエンゲージメントを築くためにも活用できます」

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